日经春秋 20150805

ツイッターを飛び交うつぶやきの数は、世界中で１日に５億件を超えるそうだ。「暑いよー」「花火大会なう」といった身辺雑記から著名人の爆弾発言まで、書き込まずにいられぬ人が地球にはあふれているらしい。もちろん政治家もしきりにネットで語る吼（ほ）える怒る。

▼それ自体は談論風発、いちいち目くじらを立てることはないが、ときに物騒な言葉もある。自民党の武藤貴也衆院議員が、安保関連法案に反対する学生団体について「彼ら彼女らの主張は『だって戦争に行きたくないじゃん』という自分中心、極端な利己的考えに基づく」などとツイートした件などその最たるものだろう。

▼「戦争に行く」のを前提にして、従わないなら極端な利己主義だと叱っているのだから時代が70年さかのぼったようで鳥肌が立つ。議員はまだ36歳というのに面妖なことだ。そもそもこういう物言いは安保法案を「戦争法案」だと唱え、徴兵制復活の不安を訴える人たちの土俵に引き込まれてもいると気づいたほうがいい。

▼まあ、ツイートなどその場の勢い。しょせん５億分の１なのだが武藤さんは公式ブログでもなかなかの論客ぶりだ。たとえば３年前には憲法を「欧米の思想の教科書」と指摘して三大原則を批判した。いわく「基本的人権の尊重は日本精神を破壊した『主犯』だ」「生存権であっても制限されるもの」……。目まいがする。