天声人語 20160326 津軽海峡の新幹線

来源:互联网 发布:类似知否的小说 编辑:程序博客网 时间:2024/04/29 04:04
明治40年だから109年前の5月、21歳の石川啄木は妹を伴って津軽海峡を渡った。故郷での騒動で白眼視され、「石をもて追はるるごとく」ふるさとをのがれて、北海道に新天地を求めた▼陸奥(むつ)湾に臨む青森市内の公園に歌の碑が立つ。〈船に酔ひてやさしくなれる/いもうとの眼(め)見ゆ/津軽の海を思へば〉ログイン前の続き。いまは「こどもの日」の5日に函館の地を踏んだ。北の大地を彩る遅い春が、海峡を越えて北海道に渡る頃である▼梅、桃、桜の開花前線は、本州北端で待ち合わせるようにして、5月初めにかけて一斉に海峡を渡っていく。天下の春を集めた函館は、傷心の啄木に美しく映った。つかのまの幸福な日々を、そこで過ごすことになる▼その函館へ、待望の新幹線が延びる。〈ふるさとの訛(なまり)なつかし/停車場の人ごみの中に/そを聴きにゆく〉。啄木の歌碑のある上野駅をへて東京から約860キロ。昭和の演歌にうたわれた北への旅は、きょうから4時間2分にまで縮まる▼ひと足早い「春」ながら、前途の厳しさも聞こえてくる。一番列車こそ25秒で売り切れたが、この先は空席も目立つ。飛行機との競争も多難らしい。赤字がかさんで「冬景色」に沈まぬよう、お願いしたい▼ビジネスより観光需要に期待する声もある。15年後には札幌まで至る計画という。そこには啄木の〈石狩の都の外の/君が家/林檎(りんご)の花の散りてやあらむ〉という叙情ゆたかな歌碑が立つ。北への憧れをかき立てて、旅情で売る新幹線。それもいい。
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