社説 20150101 日本の活路を切り開く年に 成長力強化で人口減に挑もう

来源:互联网 发布:印度雾霾 知乎 编辑:程序博客网 时间:2024/04/29 04:48

ようやく見えてきたデフレからの出口を再び見失うことなく、日本を再浮上の確かな軌道に乗せなければならない。今年はまさに正念場である。

 昨年末の衆院選で圧倒的な信任を得た安倍政権は、より強固になった基盤を生かし、経済再生を最優先に、社会保障、外交・安全保障など政策課題への取り組みを、一段と加速させる必要がある。

 今年は戦後70年にあたる。戦後の復興期に産声を上げた1947~49年生まれの「団塊の世代」は全員、65歳以上の高齢者となる。老人が増える一方で、日本の総人口は2008年をピークにすでに減少に転じている。

 少子高齢化に伴う人口減少に歯止めをかけ、国の活力低下を防がねば、日本の未来が危うい。

 東西冷戦の終結から四半世紀。国際秩序は新たな危機を迎えている。米国の影響力の低下、中国の台頭、横行する国際テロ活動、グローバル経済の動揺――。日本の安全を脅かしかねない事象が次々に起きている。

 内外ともに重要な局面にある中で、平和で安定した国民生活の維持へ、活路を切り開いていく節目の年としたい。

 ◆アベノミクスの補強を◆

 「アベノミクス」継続の是非が争点となった衆院選で、有権者は与党の主張に軍配を上げた。だが、地方や中小企業では恩恵が実感できていないなど課題も多い。

 政策の足らざる点を大胆に修正しながら、経済の安定回復の実を上げなければならない。特に急を要するのは成長戦略の強化だ。

 アベノミクスは、人々の心に長年染み付いた縮み志向のデフレマインドを払拭し、前向きの動きを呼び起こす「動機」を強めることに重きを置いた政策だ。

 「第1の矢」である金融緩和でモノの値段が上がりやすくし、「第2の矢」の財政出動で景気が上向くきっかけを作る。

 そのうえで、企業や個人が創意工夫を生かして新しいビジネスに動き出せるよう、後押しするのが3本目の矢の成長戦略だ。

 肝心の3本目の矢が不十分では、第1、第2の矢は無駄射ちに終わってしまいかねない。

 安倍首相は岩盤規制の打破を掲げる。産業の新陳代謝を促す規制改革を成長戦略の柱に据える手法は正しいが、中身は不十分だ。

 農業、医療などの分野で、もっと大胆な改革の姿を示さないと、人々に挑戦心は生まれまい。

 安全性が確認された原子力発電所の再稼働や、環太平洋経済連携協定(TPP)交渉の決着も、企業が将来の経営環境を見通しやすくするために、欠かせない。

 企業経営者も、そろそろ積極姿勢に転じてはどうか。

 上場企業の今年3月期決算は、3年連続の増益で過去最高をうかがう利益水準となる見通しだ。

 この利益を、賃上げや雇用増を含むヒトへの投資や、新たなビジネスに有効に使いたい。政府も、賃上げした企業の税負担を軽減するなどして、後押しすべきだ。

 ◆雇用充実が活力の源泉◆

 成長戦略の充実は、人口減への対応としても極めて重要だ。

 バブル崩壊後の日本経済低迷の底流には、人口動態の変化がある。15歳以上65歳未満の生産年齢人口は、総人口に先立って90年代をピークに減少が始まった。

 働き盛りの人の数が減れば、生産力も購買力も低下し、成長力を損なう。90年代初めに3%台だった日本経済の潜在成長率は、今や0%台半ばとされる。

 人口減が進行する中で成長を維持していくには、まず働く人を確保することだ。女性や高齢者が働きやすい環境を整えるべきだ。

 若者や女性に多い非正規労働者の処遇改善も欠かせない。働く場の拡大と働きに見合った報酬の充実が、社会に活力を生む。

 人口減は都市部に先行して地方で始まり、スピードも急だ。中小企業や農業など、地場の産業を活性化して若者の雇用の場を確保することが何より大事である。

 国民が安心して暮らせる社会を維持するには、社会保障制度の改革も急務だ。

 出生率を高め、人口減に歯止めをかけるためにも、子育て世代への支援など、少子化対策を充実させる必要がある。

 日本の児童・家族向け支出の対国内総生産(GDP)比率は1%台で、少子化対策で成果を上げるスウェーデンやフランスの3%台と比べて低い。高齢者向け施策への支出が手厚いのと対照的だ。

 限られた財源を、未来への投資である少子化対策に、より多く振り向けていく必要がある。そのためにも、医療・介護の分野では、公的支出の効率化を進めたい。

 身近なかかりつけ医の充実で、高齢者の大病院での診療、入院を減らし、安価な後発薬の利用を増やす。医療水準を維持しながら支出を節約し、必要な施策に回す工夫を凝らすべきだ。

 1000兆円超の借金を抱える国の財政状況は、放置すれば日本経済の信認を損ない、返済負担のツケが次世代にのしかかる。

 消費税率の10%への引き上げ先送りを決めた安倍首相は、20年度に基礎的財政収支を黒字化する目標は堅持し、今夏までに達成のための計画を策定すると宣言した。確実に実行し、財政健全化の一歩を踏み出さねばならない。

 ◆台頭する中国に備えよ◆

 ロシアによるクリミア編入の強行、中東での過激派組織「イスラム国」の拡大など、既存の国境線に象徴される戦後の国際秩序が、大きく揺らいでいる。

 東西冷戦の終結で、自由と民主主義の旗頭である米国を中心にした、安定した国際秩序が実現すると期待された。だが、現実は、その米国の相対的な影響力の低下により、混迷を増しつつある。

 国際秩序が崩壊すれば、日本の安全も損なわれる。とりわけ、アジアで突出した軍事・経済力を背景に海洋進出の動きを強める中国の行動には、警戒を怠れない。

 昨年11月、安倍首相と習近平国家主席による、約3年ぶりの本格的な首脳会談が実現したのは、関係修復の一歩だ。だが、中国は依然、力による現状変更を目指す姿勢を改めていない。

 尖閣諸島周辺での中国の危うい行動に自制を求めると同時に、自衛隊と中国軍の間の海上連絡メカニズムの整備など、信頼醸成の努力を続ける必要がある。

 中国経済は今、製造業や不動産投資中心の高度成長から、サービス業や消費を主体にした安定成長への移行期を迎えている。

 中国が、日本の官民の経験に学び、双方に利点のある形で日中連携を進めるなら、「戦略的互恵関係」の構築にも役立とう。反面、産業構造の転換に伴う国内の不満をそらすため、強硬な対外姿勢を加速させるなら、危険が増す。

 日本は、米国との同盟や、オーストラリアなど価値観を同じくする周辺国との連携の強化で、中国の行動に備える必要がある。核や弾道ミサイルの性能を高める北朝鮮の動きも、不気味だ。

 安倍政権は昨年、集団的自衛権行使の限定容認を閣議決定した。今年はそれを受けた安全保障法制の整備を確実に進めなければならない。平時から有事まで、切れ目のない対応を可能にしておくことが、日本の安全に不可欠だ。

 ◆欠かせぬ日米同盟強化◆

 日米同盟による抑止力維持と沖縄の基地負担軽減の両立へ向け、米軍普天間飛行場の辺野古移設を実現することも肝要だ。

 集団的自衛権や辺野古移設には一部の野党の反対も根強いが、着実に歩を進める必要がある。

 首相は、自民党の「1強」状況にあぐらをかくことなく、野党の説得や国民への説明を、これまで以上に丁寧に行うべきだ。

 戦後70年の今年は、日本が歴史認識を改めて問われる場面も予想される。

 慰安婦の強制連行などいわれなき誤解を解く努力を続ける一方、13年末の首相の靖国神社参拝のように、中国や韓国に対日批判の口実を与える行動は慎みたい。

 日本の国際的な評価を高めるには、アジア太平洋地域だけでなく、地球規模の問題への対応にも貢献していくことが重要だ。

 インターネットを駆使して世界中から若者を勧誘し、国境を無視して勢力を拡大するイスラム国は、国際秩序にとってまったく新しい形の脅威だ。欧米やアジアへテロが拡散しつつある。

 活動を支える資金や人の流れを遮断するため、日本も具体的な対策での連携に力を尽くしたい。

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