天声人語 20150122

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「切れる」というのは縁起が悪いとされるが、吉兆のこともある。陳舜臣(ちんしゅんしん)さんは作家として立つ前、勤めから歩いて帰る道で古いカバンの取っ手がぷつりと切れた。仕方なく小脇に抱えて帰り着くと、応募した推理小説『枯草の根』が江戸川乱歩賞を受けたと知らせが待っていた▼そのとき37歳。幼い娘の風邪を看病しながら読んだ小説がひどいもので、俺でも書けるかなと思ったのが契機という。陳文学ファンはその小説家氏に感謝しなくてはなるまい▼それから50余年。きのう90歳で亡くなった陳さんは、日本と中国を語り、ユーラシアを語り、国境も時代も軽々とこえるスケールで読者を魅了した。中国にルーツを持ち神戸に生まれ育った「複眼」で、両国の精神風土をしなやかにとらえた人だった▼天安門事件のすぐあとには、こう述べていた。「中国の権力集団は、銃口によって政権を守ろうとしている。政権を守るのは、じつは人心であることを知らない。なんという無知であろうか」。王朝興亡の歴史を深くふまえた言葉であろう▼脳内出血の病床から退院した4日後に阪神大震災に遭った。不自由な体で「気をとり直して、明日の神戸を語ろうではないか」と文をつづって呼びかけ、愛する町を励ました▼大阪外国語学校の同窓で親友だった司馬遼太郎さんが亡くなったときは、「あなたは夢をとじて、私たちの前から去りました」と言葉を寄せた。縦横無尽の膨大な仕事を残して、骨太の作家がまたひとり夢を閉じた。
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