天声人語 20150323

来源:互联网 发布:php找工作 编辑:程序博客网 时间:2024/06/05 11:00
花を詠む歌は数あれど、この名高い作品の大胆な発想には舌を巻く。〈世中(よのなか)に絶えて桜のなかりせば春の心はのどけからまし〉在原業平(ありわらのなりひら)。この世に桜がまったくなかったら、春も穏やかな気持ちでいられるのに、と▼今か今かと咲くのを待つ。咲けば咲いたで散るのを惜しむ。桜はなにかと人の心をかき乱し、物思いに沈ませる。なかりせば、と現実には起こりえないことを仮想しながら、桜へのあふれる愛を逆説的に吐露する仕掛けである▼心穏やかではいられない季節が今年もやってきた。花の便りが各地から相次いでいる。おとといは鹿児島や名古屋、きのうは高知や静岡などでソメイヨシノが開花した。平年より少し早いところが多いようだ▼コートのいらない陽気だったきのうの都心を歩いてみた。東京駅近くのソメイヨシノを観察すると、枝先の方から2輪、3輪と開き始めている。早咲きだなと以前から感じていた霞が関の外務省に足を延ばすと、一部の木々がほぼ満開。ただ、これは種類が違うらしい▼随分前に奈良の吉野山でヤマザクラを眺めたことがある。花に加えて紅褐色の葉が目立った。葉が出る前に花だけが咲き誇るソメイヨシノとの趣の違いが面白かった。色々な種類を見比べるのも楽しそうだ▼伊勢物語では、先の業平の歌に続き別の人が詠む。〈散ればこそいとゞ桜はめでたけれうき世になにか久しかるべき〉。この世は無常、桜は散るからこそ素晴らしい、という称賛だ。古今、ほめ方も色々である。
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