社説 20150517 デジタル教科書 活字文化の衰退を招かないか

来源:互联网 发布:ubuntu vim 配置 编辑:程序博客网 时间:2024/05/16 06:30

社会のデジタル化が進んでも、子供たちが紙の教科書を読み、鉛筆で文章を書くことの大切さは変わらない。

 文部科学省の有識者会議が、タブレット型の情報端末を使う「デジタル教科書」の導入について、議論を始めた。約1年半で結論を出すという。

 有識者会議は、「導入ありき」の拙速な議論に陥ることなく、問題点をきちんと見極め、慎重に検討を進めてもらいたい。

 今回の教科書のデジタル化論議の背景には、教育現場のIT化の流れがある。政府は、電子黒板の普及や児童・生徒への端末配備などを目指している。

 動画や音声の機能が付いた端末の活用で、子供の興味や関心を呼び起こす効果が期待される。

 独自ソフトを入れた端末を補助教材として使い始めた学校は少なくない。画面を動かしながら、立体の特徴を確かめたり、英語の正しい発音を聞いて、音読練習をしたりする学習が可能になった。

 障害を持つ子供にとって、文字の拡大や文章の読み上げといった機能は、理解の助けになるという指摘もある。

 ただし、教科書は、補助教材と異なり、すべての児童・生徒が手にするものだ。子供たちは教科書を通じて活字に親しみ、読み書きの基礎を身に付けてきた。

 教科書がデジタル化された場合、子供たちは情報端末を自宅に持ち帰るようになる。家でも端末操作に熱中するなどして、生活のリズムが変わり、本を読む機会が減ってしまわないか心配だ。

 デジタル教科書の導入が、「活字離れ」に拍車をかければ、活字文化の衰退を招きかねない。

 日常的な使用が、視力や姿勢に悪影響を与える懸念もある。

 日本では、教科書の作成を民間会社に委ねている。内容が学習指導要領に基づいているかどうか、政府が検定を行うことで、質を担保している。動画や音声の厳正なチェックは可能だろうか。

 義務教育の小中学校で使う教科書は、国費で購入し、無償配布されている。情報端末の購入費や維持費などを、すべて国が負担するのかという問題も出てこよう。

 情報端末を授業に導入した米国の一部地域では、ソフトの不備や教師の習熟不足などのトラブルが相次いだ。デジタル教科書の試験運用を進める韓国でも、目の疲れを訴える声が出たという。

 様々な課題を踏まえれば、デジタル技術の活用は、補助教材にとどめておくべきではないか。

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