每日小学生新聞 図解なるほど:「大阪都構想」 ５・１７、いざ決戦

　大阪市民おおさかしみんが「大阪都構想おおさかとこうそう」に賛成さんせいするか反対はんたいするかを選えらぶ住民投票じゅうみんとうひょうが１７日にちに行おこなわれます。実現じつげんすれば、将来しょうらいの大阪おおさかのかたちが大おおきく変かわることになります。でも大人おとなたちの間あいだでも「まだよく分わからない」という声こえも。投票日とうひょうびを前まえに、おさらいをしてみましょう。【文ぶん・三野雅弘みのまさひろ／え・渡辺正義わたなべまさよし】

　◇ポイント

＜１＞住民投票じゅうみんとうひょうは「政策せいさく」選えらぶ制度せいど

＜２＞大阪市おおさかしを５特別区とくべつくに分わけることを提案ていあん

＜３＞賛成さんせい・反対はんたいどちらも激論げきろん

＜４＞過去最大かこさいだいの住民投票じゅうみんとうひょう

　■「行政区ぎょうせいく」と「特別区とくべつく」

　現在げんざいの大阪市おおさかしなど政令市せいれいしに設置せっちされている区くは「行政区ぎょうせいく」です。地域住民ちいきじゅうみんとの窓口まどぐちとして設もうけられており、区長くちょうは市長しちょうが任命にんめいするので多おおくは市職員ししょくいんが就つきます。区議会くぎかいもありません。

　これに対たいして、「特別区とくべつく」は市町村しちょうそんなどと同おなじ自治体じちたいです。１９４７年ねんに定さだめられた地方自治法ちほうじちほうで、東京都とうきょうとだけに設置せっちが認みとめられ２３の特別区とくべつくができました。独自どくじの予算よさんを持もち、区議会くぎかいがあり、区長くちょうや区議くぎを選挙せんきょで選えらびます。

　■住民投票じゅうみんとうひょう・海外かいがいでは

　最近さいきんの海外かいがいの大規模住民投票だいきぼじゅうみんとうひょうでは、昨年さくねん９月がつに行おこなわれたスコットランドのイギリスからの独立どくりつをめぐる住民投票じゅうみんとうひょうがありました。有権者約ゆうけんしゃやく４３０万人まんにんのうち約やく８５％が投票とうひょう。結果けっかは独立反対票どくりつはんたいひょうが約やく２００万票まんびょう、賛成票さんせいひょうが約やく１６２万票まんびょうで、イギリスに残のこることが決きまりました。

　国くにの政策せいさくをめぐって国民投票こくみんとうひょうをする国くにもあります。イタリアでは２０１１年ねん６月がつ、全廃ぜんぱいしていた原子力発電げんしりょくはつでんを再開さいかいするかどうかの国民投票こくみんとうひょうが行おこなわれました。投票率とうひょうりつは約やく５５％で、投票とうひょうのうち反原発票はんげんぱつひょうが約やく９４％を占しめ、政権せいけんは再開さいかいを断念だんねんしました。

　◇賛成さんせいか反対はんたいを投票とうひょう

　私わたしたちが暮くらしている日本にっぽんでは、多数たすうの人ひとの意見いけんをもとに政治せいじが行おこなわれています（民主主義みんしゅしゅぎ）。けれど、実際じっさいに全員ぜんいんが集あつまって話はなし合あいをすることは不可能ふかのうなので、自分じぶんの考かんがえに近ちかい候補者こうほしゃを選挙せんきょで選えらび、政策せいさくを実現じつげんしてもらっています。選挙せんきょは、政治家せいじかという「人ひと」を選えらぶ制度せいどなのです。一方いっぽう、「政策せいさく」を選えらぶのが住民投票じゅうみんとうひょうです。重要じゅうような政治せいじテーマに対たいして、一人一人ひとりひとりが直接ちょくせつ、賛成さんせいか反対はんたいかを投票とうひょうする制度せいどです。これまで争あらそわれたテーマとしては、原子力発電所げんしりょくはつでんしょやごみ処分場しょぶんじょうの建設けんせつ、市町村合併しちょうそんがっぺいなどがありました。

　◇「府市合ふしあわせ」＝不幸ふしあわせ？

　今回行こんかいおこなわれる住民投票じゅうみんとうひょうは、大阪市おおさかしという役所やくしょをなくして市域しいき（２４行政区ぎょうせいく）を五いつつの特別区とくべつくに分わけることに賛成さんせいか反対はんたいかを問とうものです。

　人口約じんこうやく２７０万人まんにんの大阪市おおさかしは現在げんざい、市しのなかでも大おおきな力ちからを持もつ「政令指定都市せいれいしていとし」です。府ふと市しでそれぞれ同おなじような仕事しごとを二重にじゅうにしたり、意見いけんの食くい違ちがいで政策せいさくが進すすまず、「府市合ふしあわせ（不幸ふしあわせ）」とも呼よばれていました。このため橋下徹市長はしもととおるしちょうら「大阪維新おおさかいしんの会かい」は、市しの力ちから（権限けんげん）とお金かね（財源ざいげん）を府ふに移うつし、府ふは都市計画としけいかくや交通網整備こうつうもうせいびなどを考かんがえ、特別区とくべつくは福祉ふくしや教育きょういくなどの住民じゅうみんサービスを行おこなうというふうに、役割やくわりを分わけようと考かんがえました。これが大阪都構想おおさかとこうそうです。ただ、府ふの名前なまえを「都と」にするには新あらたな法律ほうりつが必要ひつようで、この住民投票じゅうみんとうひょうだけでは実現じつげんしません。

　◇二重行政解消にじゅうぎょうせいかいしょう？　住民じゅうみんサービス低下ていか？

　大阪維新おおさかいしんの会かいは「都構想とこうそうで二重行政にじゅうぎょうせいが解消かいしょうし、税金ぜいきんのむだ遣づかいをなくすことができる」「２７０万人まんにんの市域しいきを五いつつに分わけることで住民じゅうみんの声こえを政策せいさくに取とりいれやすくなる」などと主張しゅちょうしています。

　これに対たいして自民じみん、民主みんしゅ、公明こうめい、共産きょうさんの各党かくとうなど反対派はんたいはは「政令市せいれいしだからこそできていたことができなくなり住民じゅうみんサービスが低下ていかする」「二重行政にじゅうぎょうせいは話はなし合あいで解決かいけつできる」「複数ふくすうの特別区とくべつくで『一部事務組合いちぶじむくみあい』という新あらたな組織そしきを作つくる必要ひつようがある」などの理由りゆうで反対はんたいしています。

　◇他ほかの大都市だいとしも注目ちゅうもく

　今回こんかいの住民投票じゅうみんとうひょうは、大阪おおさかの将来像しょうらいぞうを決きめる大おおきな分岐点ぶんきてんです。投票率とうひょうりつに関係かんけいなく、住民投票じゅうみんとうひょうの結果けっかには従したがう義務ぎむがあり、賛成票さんせいひょうが反対票はんたいひょうを１票ぴょうでも多おおく上回うわまわれば、２０１７年ねん４月がつに大阪市おおさかしを廃止はいしして特別区とくべつくを設置せっちすることが決きまります。一方いっぽう、反対票はんたいひょうが半数以上はんすういじょうなら大阪市おおさかしが存続そんぞくします。

　４月がつに開ひらかれた市しの住民説明会じゅうみんせつめいかいには「制度せいどの中身なかみを理解りかいして１票ぴょうを投とうじたい」という大勢おおぜいの市民しみんが詰つめかけました。投票権とうひょうけんがある２０歳以上さいいじょうの大阪市民おおさかしみんは約やく２１１万人まんにん。住民投票じゅうみんとうひょうとして国内こくないで過去最大規模かこさいだいきぼです。政令市せいれいしの今後こんごを占うらなうだけに、大阪以外おおさかいがいの他ほかの大都市圏だいとしけんからも熱あつい視線しせんが注そそがれています。