天声人語 20150614

来源:互联网 发布:社交网络 mp4 编辑:程序博客网 时间:2024/06/06 05:47
朝届いた新聞を読むとき、心の中で小欄左上のハコに挨拶(あいさつ)する癖がついた。鷲田清一さんの「折々のことば」が始まって二月(ふたつき)半になる。面積はこちらが2倍だが、「図体(ずうたい)は大きいけどねぇ」と皆さんに言われまいと、心身がひきしまる▼かつて、左上には「折々のうた」があった。詩人の大岡信(まこと)さんが足かけ29年掲載した。毎朝、心待ちにされた方も多かろう。終了から8年。静岡県三島市の大岡信ことば館で「折々のうた」を味わう展覧会が開かれていると聞いて訪ねた(28日まで)▼6762回に及んだ掲載から、1月から12月までの日付順に365回分を選(え)りすぐって展示している。それぞれの複写カードがあって、好きな12枚を選び、簡単だがしゃれた製本をしてお土産にできる▼当方は、各月から1枚ずつ選んだ。1月は俳句で〈ねこに来る賀状や猫のくすしより〉久保より江。「くすし」は医師。大正15年作というから、恵まれた猫だ▼11月は短歌を取った。〈若者は語彙(ごい)すくなくて刺(とげ)なせる物言ひをする淋(さび)しきまでに〉篠弘。平成2年の歌集からだが、いま、若者に限らず憂いはいよいよ深い。カードを選んで詩歌の森を散策しながら、おまえの言葉はどうかと自問した▼振り返れば、当方は大岡さんとはすれ違いで、「折々のうた」の最終回翌日が、偶然ながら小欄執筆の初回だった。タイトルの緑葉も鮮やかに、悠々と急がぬ構えの鷲田さんとの並走を、いまは緊張しつつ楽しみたい。いや、糧とさせていただきたい。
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