天声人語 20150629

虹色は多様性をあらわすという。性的少数者の運動を象徴するのがレインボーカラーだ。２６日、ワシントンのホワイトハウスがこの色にライトアップされた。オバマ大統領は「勝利」を歓迎した▼同性カップルが結婚する権利を米国の憲法は保障している――。そんな判決を連邦最高裁が出した。これからはすべての州で同性婚が認められることになる。長く続いた論争に司法が決着をつけた。歴史的な判断といっていいのだろう▼結婚とは異性同士がするもの。多くの人が当然と信じてきた考え方も、実際には変わりうる。同性婚に反対する米国人は年々減り、今年の世論調査では約４割に。逆に賛成派は６割近くに増えたという。社会の大きな変化を最高裁も見てとったのか▼次元は違うが、日本人の結婚観も変容している。結婚するのが当然と考える人は３割強にまで減り、必ずしもしなくてよいと考える人が６割を超えた。今年出たＮＨＫ放送文化研究所編『現代日本人の意識構造［第八版］』が示す数字だ▼恋愛観も様変わりである。内閣府が先日発表した調査結果では、２０代と３０代の未婚で恋人がいない７６１人のうち、４割近くが恋人は欲しくないと答えた。その理由で多かったのは「恋愛が面倒」だった▼面倒だからこそ楽しいのに、などと言っても通じないか。時とともに、人の考え方や感じ方は変わる。変化が広がれば社会が変わる。同性婚が日本で受け入れられる日も、そう遠くないかもしれないと想像してみる。