日经春秋 20150802

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昭和30年1月に封切られた成瀬巳喜男監督の「浮雲」は、邦画史に残る傑作である。戦中戦後の激動を背景にしたこの男女愛憎劇で、主演の高峰秀子さんは役作りに泣いたという。時代の雰囲気を出すために、相手役の森雅之ともども徹底的に痩せる必要があったのだ。

▼お互いにこっそりビフテキなど食べない、昼食は一緒にごく軽く……。そんな「協定」を結んで減量に励んだと、高峰さんの「わたしの渡世日記」にある。終戦からわずか10年で、飢えて痩せこけた日本人の姿は遠い昔のものになっていたわけだ。それを思えば戦後もじつに70年のいま、往時の再現はいよいよ難しかろう。

▼あの戦争をめぐる映画やテレビドラマが目立ち、書店にも戦争本があふれる8月である。今年はとりわけ賑(にぎ)やかだが、リアリティー不足はやはり過ぎ去った時間の長さゆえか。ともすれば強いられた自己犠牲を美しく描いたり、アジアでの日本人の振るまいを都合よく解釈したりする傾向もみえるから用心したほうがいい。

▼「浮雲」は戦争の傷痕を描き出して哀切である。高峰さんらの苦心に加え、遠ざかったとはいえ、まだ10年前の戦争体験をだれもが共有していたからこその生々しさだったのだろう。日本軍が進駐していた仏印(ベトナム)での夢のような暮らしと、無一物となった戦後のみじめな日々。記憶を宿した作品の力は衰えない。

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