天声人語 20151010 さんま苦いか

来源:互联网 发布:right函数 vb 编辑:程序博客网 时间:2024/06/10 03:34
敬愛する他紙の名文家が、コラムを書くときは「第一感」に従うなと著作で言っていた。たとえば土用の丑(うし)の日なら、ウナギ好きだった斎藤茂吉の歌や逸話がまず思い浮かんでも、それは捨てろと。自分がすぐに思いつくことは、誰でも思いつく▼雪なら中谷宇吉郎博士の「雪は天から送られた手紙」の言葉、野球なら正岡ログイン前の続き子規――では発想が陳腐すぎると厳しい。となればサンマに佐藤春夫などもってのほか。だからこっそり書くのだが、〈あはれ/秋風よ/情(こころ)あらば伝へてよ……〉。今年も「秋刀魚(さんま)の歌」の季節である▼食べておいしく秋という季節によく似合う。したたる脂(あぶら)が七輪にはぜ、煙は流れて夕暮れの路地にとけていく。いまは失せた光景が、佐藤の名詩でよみがえる▼今季はしかし、「少ない」「小さい」という形容詞がつきまとう。水揚げが少なく、型は小さい。列島沿いに南下してくる前に、北太平洋の公海で台湾や中国の船に先取りされる影響が指摘されている▼〈一匹のさんま抜身(ぬきみ)のやうに提(さ)げ〉と、これは江戸川柳にある。長くてぎらりと光るはずが、近所のスーパーのはやや小さい。なじみの居酒屋でも、いつもは尾頭(おかしら)が皿からはみ出しそうなのに、今年はちんまり収まりがいい▼尽きない魚に見られてきたサンマだが、各国で野放図に獲(と)り合っては限界も来よう。ここは資源管理のルール作りを急ぎたい。〈さんま、さんま、さんま苦いか塩(しょ)つぱいか〉。佐藤の名詩の味わいを、乱獲によって絶やすまい。
0 0
原创粉丝点击