社説 20150617 国立大学改革 人文系を安易に切り捨てるな

来源:互联网 发布:软件后缀名 编辑:程序博客网 时间:2024/05/16 01:32

「知の拠点」としての役割を果たせるよう、国立大学が自ら改革を進めることが重要だ。

 文部科学省が、86の国立大学に対し、組織や業務の全般的な見直しを求める通知を出した。各大学は通知を踏まえて、来年度から6年間の運営目標と計画を作成する。

 2004年度の国立大学法人化により、大学の運営や財務は自由度が高まった。にもかかわらず、依然として魅力や個性に乏しい大学があるのも否めない。

 大学が、グローバルに活躍する人材や地方創生の担い手を育成する機能への期待は大きい。文科省が今回の通知で、各大学に改めて、強みや特色を明確に打ち出すよう促したのは理解できる。

 昨年の学校教育法改正で、学長はリーダーシップを発揮しやすくなった。学長が人事や予算の権限を適切に行使し、戦略性を持って、教育・研究の環境整備を図ることが欠かせない。

 疑問なのは、文科省通知が、文学部など人文社会科学系や教員養成系の学部・大学院について、組織の廃止や社会的要請の高い分野への転換を迫った点だ。

 確かに人文社会系は、研究結果が新産業の創出や医療技術の進歩などに結びつく理工系や医学系に比べて、短期では成果が見えにくい側面がある。卒業生が専攻分野と直接かかわりのない会社に就職するケースも少なくない。

 社内教育のゆとりが持てない企業が増える中、産業界には、仕事で役立つ実践力を大学で磨くべきだとの声が強まっている。英文学を教えるより、英語検定試験で高得点をとらせる指導をした方が有益だという極論すら聞こえる。

 だが、古典や哲学、歴史などの探究を通じて、物事を多面的に見るや、様々な価値観を尊重する姿勢が養われる。大学は、幅広い教養や深い洞察力を学生に身に付けさせる場でもあるはずだ。

 必要なのは、人文社会系と理工系のバランスが取れた教育と研究を行うことだろう。

 文科省は来年度以降、積極的に組織改革を進める大学に、運営費交付金を重点的に配分する方針だ。学生の就職実績や、大学発ベンチャーの活動、知的財産の実用化の状況といった指標を基に、評価するという。

 厳しい財政事情を踏まえれば、メリハリをつけた予算配分も大切だろう。ただ、「社会的要請」を読み誤って、人文社会系の学問を切り捨てれば、大学教育が底の浅いものになりかねない。

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