天声人語 20151226 年の瀬の「忙と怒」

来源:互联网 发布:cpa做题软件 编辑:程序博客网 时间:2024/06/06 03:34
年の瀬は師も走る忙しさ、などという。だが「暮しの手帖」の名物編集長だった花森安治は言っていた。「年末だから忙しいときめてかかるあたり、新聞や放送のアタマは、一見新しいようで、じつは大変な紋切型の古さかもしれぬ」▼忙しいから気が急(せ)くのか、気が急くから忙しいのか。身はそれほどではなくても心は追わログイン前の続きれる。「忙」の字は心を亡(ほろ)ぼすと書くから注意がいる。いらいらや不機嫌で、感情制御の堤防は低くなりがちだ▼世間を眺めると、どうやら中高年の男性が、師走に限らずキレたり怒鳴ったりしがちなようだ。バスで高齢男性に席を譲ろうとしたら暴言を吐かれた――。中学生の声欄への投書に反響が相次いでいる▼慰める人。同じ老人として恥ずかしいと謝る人。人間を知るのにいい経験をしたと説く人。ともあれ善意に怒気が返ってきたショックは、少年には大きかったに違いない▼木偏に冬と書くヒイラギを思い浮かべる。その葉には鬼の目を刺すという鋭いトゲがある。おもしろいことに、年輪を刻んで古木になるとトゲは自然に消えていくそうだ。つまり角がとれて丸くなる。あやかりたいが、人間、なかなかそうはいかないらしい▼喜怒哀楽の「怒」は大切な感情ながら、ぎすぎすと周囲の空気を凍りつかせてはいけない。いらいらや不機嫌は伝染力が強く、忙(せわ)しなさは感情の沸点を下げがちだ。さて当方も中高年の一人。いつも追われているような時代だが、心はゆるやかに今年を締めようと思う。
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